ハミンンンンンング
劇団子供鉅人 / ポスター・フライヤー・ZINE
大阪を舞台に父と娘の30年を往還しながらつづられる叙情詩劇。ギターの生演奏によるミュージカル作品です。現在と過去が入り交じる舞台で、記憶の奥にあるハミングのように消え入りそうな淡く儚い印象をフライヤーに落とし込みました。

見飽きたイメージと使い古された手法を上から指でなぞっていくように制作し、既視感の中から具体的な記憶を手繰り寄せ思い起こすようなデザインを心がけています。全体的にぼんやりとした印象で視認するのに一瞬目を凝らすフライヤーは、印象もすぐに滲んでいき、その滲nんでいく余韻自体が意味を持っています。

春の宵のようなふんわりとした暖かさが滲む配色にしました。月日が立って日に焼けたポラロイドの緑色とタイトルのピンクで、若々しくも懐かしい感じを出しました。

思い返すこともなくなった昔の出来事のように滲んで記憶の底に溶けていく文字です。アクリル板に絵の具を付けた指でなぞり描きしたものを撮影しました。指でなぞった形跡と、アクリル板に絵の具が反発して流れる偶然性でおもしろい表情になりました。連続される「ン」すべて違う表情でリズムを出し、全体が単調にならないようにしています。

近年よく目にし既に一巡したポラロイド写真を使い、かつ最近の演劇の宣伝美術でよく見るキャスト一人ひとりがきっちり並ぶレイアウトにしつつも、ポラロイドの余白の比率を生かした連続性のあるレイアウトと、タイトルの微妙なランダムさを合わせることで、単調にならないリズム感のある見せ方をしています。

CL:劇団子供鉅人 / AD,D:奥山太貴 / P:トキ・益山貴司